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高松高等裁判所 昭和24年(控)519号 判決

被告人

眞鍋光男

主文

原判決を破毀し本件を松山地方裁判所西條支部に差戻す。

理由

弁護人村上常太郞控訴趣意第一点について。

原審第一、二回公判調書によれば裁判所が、被告人が証拠とすることに同意しない別件源代宗利被告事件の確定記録中の公判調書を取調べる旨の決定をし、その取調をしたことは所論の通りであるが、右公判調書は刑事訴訟法第三百二十三條第三号により証拠能力を有するものと解するを相当とするから本論旨は理由がない。

弁護人村上常太郞、同藤井弘控訴趣意各第二点について

原審第二回公判調書によれば檢察官が証人小池実、同源代宗利を訊問するに際し未だ被告人及び弁護人が証拠とすることに同意しない司法警察員作成の同人等の供述調書を遂次読聞けたこと各論旨摘録の通りである。しかし檢察官の尋問の次第を仔細に調べると、檢察官が右各証人に対し公訴事実全般に亙る証言を求めたに対し、各証人が先に司法警察員に対してした供述と相違する証言をしたため、その証明力を爭うために前記司法警察員の供述調書を法廷に顯出したものと認められる。而して同法第三二八條により証拠として採用せられる前にその内容を法廷で読聞けたことは不当なるを免れないけれども、右の証拠調に関する異議が刑事訴訟規則第二〇六條第一項の期間内に申立てられた形跡が認められないのみならず原審第三回公判調書によると、檢察官が前記各供述調書につき刑事訴訟法第三二八條により取調を求め被告人もこれに同意した上、その証拠調を了したことが明らかであるから、結局右証拠調に関する不法は判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反とは言い難く論旨は何れも理由がない。

弁護人村上常太郞、控訴趣意第三点、同藤井弘控訴趣意第六点について。

しかし前に共犯者の一部の者のこ判に関與した審判官が後に起訴された他の共犯者の審判に関與することは刑事訴訟法第二〇條各号に該当せず同法第二一條の忌避の原因ともならないものと解すべきであるから本論旨も何れも採用できない。

同弁護人の控訴趣意第五点について。

原判決が証拠に挙げている「被告人小池実の判示(ロ)の認定した事実」は、共同被告人である右小池実の原審公判廷の供述の外本件被告人に対する関係において証拠調を終ていない、滝本時次の盜難届及び始末書、司法警察員作成の松本米太郞、同シゲヨの供述録取書、服藤英孝、曾我寬の各被告事件の公判調書を綜合して認定せられたものであることは原判示自体に徴し明らかであるが從つて右認定事実を被告人の罪証に供するときは結局適法な証拠調をしない証拠によつて事実を認定することになるから、原判決はこの点に採証上の違法があり右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから本論旨は理由があり原判決は全部破毀を免れない。

弁護人村上常太郞控訴趣意第四点について。

記録を精査し諸般の情状を考えると、被告人に対する原審の量刑は重きに失し不当であると認められるので本論旨は理由があり原判決はこれを破毀すべきものとする。

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